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新型コロナウィルスについての注意点


昨年末から中国武漢発の新型コロナウィルス感染症が流行しています。ようやく中国は団体旅行および旅行会社が手配した個人旅行者の海外旅行も制限しましたが、春節という旧暦の正月休暇の影響で、制限前にかなりの人数が武漢を含む中国本土から海外に出国したものと思われます。現時点で分かっている点で重要な点は以下の通りです。

 

  • 症状は、発熱、呼吸困難感、咳などの下気道症状(発熱ははっきりしないこともある。体温は解熱剤などの影響を受けるのであまり当てにできない。鼻汁、鼻閉などの上気道症状は少ない)
  • 画像検査で両側性肺炎を認める
  • 病原体はコロナウィルス(普通のかぜの原因にもなるが、変異しやすく、病原性に差が出る)
  • もともと健康な人の病状はさほど重くならないが、臓器不全(呼吸不全、心不全、腎不全など)、敗血症といった持病が既にある患者が重症になる
  • 小児患者は少ない(SARS、MERSでも同様でした。逆に普通のかぜの時は、小児に多い。SARS、MERSについては下記参照)
  • 中国の武漢にある様々な野生動物も扱う市場から流行がはじまった
  • 人から人に感染する(接触、飛沫、空気感染かなどの具体的な感染経路は不明)
  • 潜伏期間は(現時点で最長)14日間(*潜伏期間については、2-12日、最大14日という中国の発表と、アメリカCDCなどのスクリーニング基準に基づいて記載)
  • 潜伏期間中にも感染する
  • 症状が軽ければ1週間程度で回復するが、約半数 の感染者は1週間程度で重症化する
  • 確定診断は喀痰などを利用したウィルスの遺伝子検査である
  • 確立された治療法はなく、支持療法(点滴や安静、呼吸不全に対する人工呼吸器など)が主である
  • 医療者は、マスク、ガウン、手袋、アイシールドの装着が推奨されている。(検体採取時にはN95マスクが推奨されているので、医療者は診察時からN95マスク着用が望ましい。)
  • 患者にはサージカルマスクを着用させる(発病者はN95マスクではない。普通のマスクを密着させる)
  • 診断されて、入院が必要な場合、日本なら第二類感染症指定病院(以上)に入院する(同じコロナウィルス感染症は第二種感染症に分類されている。通常の病院では施設や人員的に対応できないと思われる)

(  )の部分は私の補足です

 

自分たちでできる対応としては、人混みいはできるだけ行かないようにすること、特に持病がある方はそうした方がよいでしょう。移動手段には電車ではなく、できれば車がよいでしょう(バスは不可)。不特定多数の人と一緒の空間にはいないようしましょう。マスク着用、手洗いを徹底しましょう。免疫力が下がらないように、摂生しましょう。

 

かつて、スペインかぜと呼ばれる、新型インフルエンザが第一次世界大戦時代に世界中で大流行しました。死者は5千万人以上だったそうです。最近では、コウモリ由来のSARS(サーズ), ヒトコブラクダ由来のMERS(マーズ)と呼ばれるコロナウィルス感染症が、2002年に中国と2012年に中東でそれぞれ起こりましたが、それらは大流行まではしませんでした。しかし、それでもSARSでは774人(感染者数8098人)、MERSでも858人(感染者数2494人)が亡くなっています。今回の新型コロナウィルスは、感染者数はMERSにほぼ並びました。致死率としては、今のところMERSの約30%、SARSの約10%よりは低いのですが、感染者数はSARSを超えるという意見もあるので、注意深くみていきたいと思います。

 

追記)中国当局から潜伏期間中でも感染するとの発表がありました。感染力が異常に強いようです。発病していなくても、心当たりがある人は外出を控えて、活動を自粛してください。