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総合診療医が考える花粉症治療のオススメは?


花粉症とは、主に花粉をアレルゲンとして引き起こされる鼻炎や結膜炎のことで、正式にはアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎という病名です。日本の場合、スギ花粉が原因として多いのですが、海外ではその国や地域で多い花粉に反応して症状が引き起こされます。今回は治療について考えたいと思います。

 

治療について、鼻炎と結膜炎に分けて行うことになりますが、症状の出かたは人によって様々であり、その重症度によっても異なります。

 

まず、鼻炎についてですが、鼻炎が生じると、鼻汁(はなみず)、鼻閉(はなづまり)の症状が起きます。副次的に臭いが分からなくなることもあります。鼻炎の治療のオススメは、ステロイド点鼻薬です。もともと点鼻薬は1日2回の薬だけでしたが、今は1日1回だけでも効果が持続する薬があるので、かなり楽になりました。ステロイド点鼻薬は鼻汁と鼻閉の両方に効果が出ます。ステロイドと聞くと、なんだか怖いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、内服に比べると点鼻薬では副作用が少ないので比較的安心して使用できます。一般的には、抗ヒスタミン薬の内服も鼻炎の治療法としてありますが、鼻閉にはあまり効果がありません。鼻閉に対して効果がある合剤(2種類混ざっている薬)を使うか、他の内服薬(例:ロイコトリエン拮抗薬)を併用することになります。また、抗ヒスタミン薬は眠気、目や口の渇きが出ることがあり、特に古いタイプの抗ヒスタミン薬では、便秘や尿閉(尿がでづらくなる)といった副作用も起こりやすくなります。とはいえ、点鼻薬だけでは症状が抑えきれない場合には、抗ヒスタミン薬などの内服薬を併用します。年齢、既往、他の内服薬との飲み合わせなどを考慮して、それぞれに合いそうな薬を選択することになります。併用薬も眠気が出ないタイプもあります。

 おまけの話ですが、眠気が絶対に出ない薬として漢方薬があります。1日2-3回内服しないとならないのですが、意外?と効果があります。自然派志向の方にもよいでしょう。料金が安めなのも漢方の魅力ですね。ただし、漢方は目の症状はあまり改善してくれない印象があります。

 

次に、結膜炎の治療ですが、当然、点眼薬の治療が主になります。点眼薬には大きく分けて3つあり、メデュエーター遊離抑制薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬です。

 基本的な考え方として、メデュエーター遊離抑制薬はアレルギー反応が起こること自体を抑えてくれますが、もう起きてしまったアレルギー反応は抑えてくれません。既に起きているアレルギー反応は抗ヒスタミン薬で抑えることができます。ステロイド薬はメデュエーター遊離抑制薬のように、炎症に関わる物質を強力に抑えてくれますが、緑内障(眼圧が上がる)、白内障(白くもやがかかる)、感染症のリスク等があります。特に子供では眼圧が上がりやすいと言われています。合理的に考えますと、花粉が飛び始める前(だいたい2週間前)にメデュエーター遊離抑制薬の点眼を開始して、シーズンが来たら抗ヒスタミン薬の点眼の併用を考える、もしも重症なら抗ヒスタミン薬とステロイド点眼を併用するという形が良いように思われます。実は、メデュエーター遊離抑制薬と抗ヒスタミン薬の両方の効果が期待できる点眼薬があります。例えば、それはパタノール点眼とアレジオン点眼です。両者の違いは、価格とコンタクトレンズに関してです。アレジオン点眼の方が高価ですが、コンタクトレンズの上から点眼できます。コンタクトへの影響については、実際上はワンデー、ハードコンタクトは影響は少ないと言われています。このコンタクトへの影響は点眼薬に含まれている防腐剤によるものですが、場合によっては角膜上皮障害を引き起こすことが報告されています。

 面白いことに、ステロイド点鼻薬を使うと、目のかゆみが軽減されます。これは鼻にある神経が、目の神経を刺激するからなのです。つまり、点鼻薬を使うと鼻から目に炎症のシグナルが伝わるのを防いでくれるわけです。目の表面に直接アレルゲンが影響する炎症は防げませんが、軽度の目の症状だけなら点鼻薬だけで済みそうです。

 

以上より、私が考えると花粉症治療のオススメは以下の通りです。

  1. 鼻症状にはとりあえず、ステロイド点鼻薬
  2. 鼻症状が辛ければ、内服薬を併用(抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン拮抗薬のどちらか、または両方)
  3. 鼻症状で眠気やステロイドが嫌なら漢方薬
  4. 眼症状で点眼するなら、まずはアレジオンかパタノール(価格とコンタクトでどちらか決める)
  5. 眼症状が辛ければ、メデュエーター遊離抑制薬、ステロイド点眼のどちらか、または両方を併用